2017/08/08 07:30  日経速報ニュース    

 2007年8月9日、フランス大手銀BNPパリバ傘下の3ファンドが米証券化商品市場の混乱に耐えきれず、新規募集と解約を停止した。のちに「パリバ・ショック」と呼ばれたこの出来事は約1年後の米リーマン・ブラザーズの破綻と「リーマン・ショック」へとつながっていく。07年8月当時に財務官を務めていた篠原尚之・東京大学政策ビジョン研究センター教授にパリバ・ショックの教訓や足元で考えられる金融・資本市場のリスクについて聞いた。

 ――07年の夏、米住宅市場の悪化をどの程度危機感をもってみていましたか。
 「自分を含め、日米の政府関係者の多くは楽観的にみていた。いつも連絡をとりあっていた米財務省の担当者も、住宅市況の過熱は気にしてはいたが金融機関のリスク管理に信頼をおいていた。ある種の『慢心』に陥っていたように思う」

 「米国の低所得者(サブプライム)向け住宅ローン問題は証券化商品が絡んでいたため、1990年代の日本のバブル崩壊などとは構図がまったく異なっていた。パリバ・ショックだけを切り取って話すことは適切ではないが、リーマン危機とその後の世界経済の低迷まで含めた全体でとらえると、危機の芽を発見する難しさやバブルがはじけた時点で経済全体に与える影響を見定めるのがいかに難しいかを示す象徴的な出来事だったといえる」

 ――BNPパリバのファンド閉鎖発表を受け、投資家はリスク回避の姿勢を強め、外国為替市場では円が急伸しました。
 「当時は借り入れた円を元手に高金利通貨建て資産で運用する『円キャリー取引』が活況だった。外国の銀行では円建ての住宅ローンを積極的に取り扱ってきた。円高は自然な巻き戻しによるもので、過度なリスク選好の調整による面が大きいと考え、為替問題について緊急に会話した記憶はない。やはり慢心していたのだろう」
 
 ――現在、バブルの芽はありそうですか。
 「(リーマン・ショック以降に拡大した日米欧の量的な金融緩和政策により)これだけ流動性が高いのだから、どこかで何かが積みあがっているのは間違いない、とまではいえる。バブルは破裂するまでわからないとよく言われるが、ありかははっきりとは見えない」

 「住宅ローン担保証券などの証券化商品市場は金融危機の後にしぼんだ。次に危機が起こるとすれば影の銀行(シャドーバンキング)かもしれない。危機後の規制強化が金融機関の手足を縛った結果、シャドーバンキングが相対的に伸びたという(規制強化の)副作用には注意すべきだ」

 ――危機の教訓は生きるでしょうか。
 「金融機関のレバレッジ(負債比率の拡大)管理と金融機関の破綻処理メカニズムの整備には教訓が生きている。経験豊富な当局者が日米欧ともにまだいるので、慢心に陥ることなくそれなりの対応ができるはずだ」

 「ただ、銀行の破綻処理については欧州で不安が残る。例えば欧州連合(EU)域内では預金保険の上限が国ごとに違う。マネーが自由に行き来できるにもかかわらずルール上は統一されていない。7月にイタリア大手銀モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの国有化が決まった時もEUで定める規定の『例外』が部分的に認められるなど、処理がスムーズには進んでいないとの印象を受けた」

〔日経QUICKニュース(NQN)聞き手は蔭山道子〕